診療科のご案内

消化器外科・一般外科

大腸・直腸の病気

大腸は小腸に続く1.5~2mの管腔臓器で結腸、直腸に区分されます。さらに結腸は部位により口側から盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に区分されます。直腸はS状結腸との境界部の直腸S状部、腹腔内(お腹の中、腹膜に包まれた部分)の上部直腸と骨盤内の肛門に続くまでの下部直腸にわかれます。(図1)

さらに肛門までの括約筋に囲まれた部分は、肛門管と呼ばれています。大腸の役割は小腸で消化・吸収された食物残渣から水分を吸収し、便として肛門まで輸送することが主な機能です。したがって仮に病気のため大腸を大部分切除することになっても生きていくことはできますが、水分の喪失が多くなるためその補給が必要となります。また直腸を切除すると排便機能が低下したり、肛門のすぐ近くの病気のため人工肛門を造設せざるをえないこともあります。

図1 大腸の区分

大腸がんについて

疫学

2015年の厚生労働省による人口動態統計によると、がんの罹患別部位では大腸がんが第1位となっています。(図2)

図2 がん部位別罹患数:大腸がん、前立腺がんが増加している。

死亡数では肺がんに次いで第2位(図3)、男女別では男性では第3位、女性では第1位となっています。(図4)

図3 がん部位別死亡数


図4 男女別がん部位別死亡数

最近の疫学的な研究ではエネルギーバランスの変化に伴う内臓肥満、運動不足、耐糖能異常が要因として考えられています。

症状

早期がんはほとんど症状がありません。検診、人間ドッグ、偶然に他の疾患の検査で発見されることが多いです。進行がんになると下血、腹痛、便柱狭小化、閉塞症状、腫瘤触知などの症状がありますが、無症状でも発見時にすでに進行がんであることもよく見られます。 また発生部位により症状の特徴があります。盲腸、上行結腸などの右側の大腸ではしこり、貧血、腹痛で見つかる傾向があります。下行結腸、S状結腸、直腸では便秘、下血、便が細い、下痢と便秘を繰り返すなどの症状が多いです。直腸でがんが全周性に狭窄をきたすと腸閉塞症を発症してがんが発見されることがあります。(図5)

図5 部位別の大腸がん症状

診断

下部消化管内視鏡検査は必須となります。がんの肉眼型から進行度の診断、治療方法の選択に重要となること、および生検結果から確定診断がなされます。がんの診断がなされると、CTスキャン、腹部超音波、腫瘍マーカーの採血検査、直腸がんではMRIなどで他臓器への転移やリンパ節の転移の有無などを調べ、がんの進行度の診断を行います。症例によってはPET検査を行い、潜在した転移の診断を行うこともあります。

進行度はステージという言葉でがんの深さ、リンパ節転移の有無、他臓器への転移の有無により分類されます。ステージにより生存率が異なってきます。(図6)

図6 ステージ分類と生存率

治療

治療法は内視鏡治療、手術、化学療法、放射線療法があり、病気の進行度や部位により異なります。早期がんでリンパ節転移がなく、大きさが小さいものでは内視鏡治療で完治が望めます。内視鏡治療には粘膜病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection, EMR)と、粘膜下層まで切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection, ESD)があります。当院では消化器内科の専門医が施行します。

手術は、ほとんどの進行がんと、内視鏡治療では根治が望めない早期がんを対象にします。 基本的な術式としては、がんの部位からある程度離れた部位で腸管をリンパ節とともに切除するリンパ節郭清術を行います。近年では腹腔鏡下手術の技術が発達し、ほぼすべての早期がん、進行がんも腸閉塞症例や巨大な腫瘍以外は腹腔鏡下手術で行っています。

当院では、大腸がんの90%以上を腹腔鏡下手術で治療しています。直腸がんについても手術技術が発達し、以前であれば永久的な人工肛門造設術を必要とした症例でも、直腸括約筋間切除術という術式で肛門を残す治療も行うになりました。また、たとえ切除不可能ながんでも大腸がんでは進行すると腸閉塞となる危険があるため、人工肛門を造設する手術が必要となります。

化学療法は、切除不能な再発・進行がんや根治的切除術後に再発予防として行う補助療法があります。大腸がんの化学療法は近年目覚ましい進歩があり、約20年前までは切除不能再発・進行がんでは生存率が1年未満でしたが、最新の情報では平均3年を超えるようになってきました。この分野は現在も新薬の登場があり、切除不能再発・進行がんでも決してあきらめることなく治療を受けるべきです。

放射線療法は進行直腸がんに対して欧米では標準治療の一つになっていますが、わが国ではまだ有効性は明らかでなく一部の施設で行われています。しかし、進行した直腸がんを手術前に放射線治療を行うことで病変を小さくしてから手術を行う方法の有効性は報告されてきています。また、再発病変に対して重粒子線という特殊な放射線治療の効果があることが知られています。

最新の手術法

腹腔鏡下手術は従来の開腹手術に比べ、傷が小さく、手術のダメージが少ないため、入院期間の短縮、早期の日常生活の復帰など、患者様にとって多くのメリットがある術式として認識されてきました。当院ではこの腹腔鏡下手術でさらに傷を少なくする単(減)孔式腹腔鏡下手術(Reduced port surgery, RPS)という手術を行っています(図7)。

具体的には、標準的な腹腔鏡下手術では5か所の傷がありますが、RPSでは1個もしくは2個の傷で同じ内容の手術を行います。当然、傷がさらに少ないため、患者様にとっても侵襲が少なく、整容性に優れています。病変の大きさや部位により適応は異なりますので、詳しくは担当医(大腸肛門専門外来、水、金曜日午前)にお聞きください。

図7 術式別の手術創の比較

大腸の良性疾患

炎症

大腸憩室炎
結腸の抵抗の弱い直動脈貫通部に圧力がかかり、粘膜が筋層を貫き小豆~大豆の大きさくらいの袋状に突出したものを憩室といいます。普段は無症状ですが、炎症を起こすと腹痛や出血をきたします。欧米人や高齢者は左側結腸に多く、アジア人や若年者では右側結腸に多いとされています。多くは腹痛で発症し、内科的治療として絶飲食、点滴、抗菌薬を投与します。多くは内科的に軽快しますが、増悪する場合や、始めから憩室が穿孔して腹膜炎となっている場合は手術を行います。

虫垂炎
新生児を除く幼児から高齢者まで、誰にでも発症しうる炎症性の疾患です。多くは右下腹部痛で発症します。初めはみぞおちの辺りが痛く、徐々に右下腹部に痛みが移動する場合なども典型的です。治療としては腹膜炎やすでに膿瘍(膿のかたまり)を形成している場合は手術を行います。軽症であれば内科的な治療で軽快することもあります。最新の研究では半数は内科的、半数は外科的治療が必要といわれています。虫垂炎手術も当院では腹腔鏡下手術を積極的に施行しています。

非特異性炎症性疾患
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis, UC)やクローン病があります。いずれも原因不明の難病指定されている疾患ですが、自己免疫疾患とされています。最近の分子標的治療薬という新薬により内科的な治療が発達しましたが、出血、穿孔、狭窄、がん発症などのために手術が必要となることがあります。

我々の強み

わたしたち消化器外科では病気の診断、治療、術後のフォロー、また不幸にも病気の再発が起こったとしても、その治療・対応など、はじめから最後まで患者様を診ます。えてして大きな大学病院やがん専門センターでは手術治療などの主たる治療は行うものの、再発したら他院に転送するなどの経過を取ることが見受けられます。我々の病院は大学病院ではありますが、初診にきた最初の日から手術後数年の経過でほぼ完治といえる日まで、もしくは病気が再発してもそれに対する手術治療、抗がん剤を使う化学療法、または緩和治療まで最後まで患者様を診させていただきます。患者様個々の生活や社会的事情を十分に配慮し、可能な限り患者様とそのご家族に寄り添う治療を行います。

専門外来

下部消化管疾患診療の責任者で日本大腸肛門病学会評議員・指導医・専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸領域)である藤井正一医師が担当します。大腸がんをはじめとする悪性疾患、憩室炎、虫垂炎、腸閉塞などの良性疾患、また痔核、痔瘻、直腸脱などの肛門疾患など幅広く診療しています。悪性疾患では手術治療はもちろん、化学療法についても最新のエビデンスを基に治療を行っています。