診療科のご案内

消化器外科・一般外科

膵臓の病気

1.膵臓がんとは?

膵臓がんは、膵臓に生じるがんのことです。膵臓がんと新たに診断される人数は、男性では1年間に10万人あたり約29.1人、女性では1年間に10万人あたり約25.5人と、やや男性に多い傾向があります。年齢別では、60歳ごろから増え、高齢になるほど多くなります。日本の悪性腫瘍による死因で膵臓がんは第4位であり、がんの部位別死亡数の順位は年々上昇傾向にあります。

  1位 2位 3位 4位 5位
男性 大腸 肝臓 膵臓
女性 大腸 膵臓 乳腺
男女計 大腸 膵臓 肝臓

膵臓には消化酵素を分泌したり、インスリンなどのホルモンを分泌したりするなどさまざまな機能があるため、そこから発生する腫瘍もさまざまです。しかし、一般に膵臓がんの約90%は膵臓で産生された消化液を運ぶ膵管という部分から発生した浸潤性膵管がんと呼ばれるものです。ここではこの浸潤性膵管がんを膵臓がんとして説明します。一般的に膵臓がんの治療成績は決して良好とはいえず、治療に難渋することもしばしばです。2007年に発表された日本膵臓学会の発表によると、5年生存率は14.5%、生存期間の平均は12.5か月と報告されています。

我々は膵臓がんに対して最善の結果がご提供できるよう、治療のみならず診断(超音波内視鏡やERCPを含む)から診療を行っています。また、治療として適切な手術を行うだけでなく、術後再発を来たしやすいため化学療法や連携施設での放射線療法など、さまざまな治療法をご提供しています。

2.自覚症状はありますか?

初期には食欲不振、腹満感、軽度体重減少などの漠然とした症状であることがほとんどであり、国内の膵臓がん集計によると、初発症状のない膵臓がんは15.4%にのぼるとされています。膵臓は部位により膵頭部、膵体部、膵尾部と名前がついており、膵頭部にできるがんを膵頭部がん、膵体部・尾部にできるがんを膵体尾部がんといいます。膵頭部がんでは皮膚や目が黄色くなる黄疸が出現することがありますが膵体尾部がんでは症状が乏しいため、手術の可能な段階でがんを発見するのは難しいとされています。また糖尿病が高率に見られ、中年以降に発生した糖尿病や、急激に血糖値が悪くなったりした場合には必ず膵臓がんを疑って精密検査を行うべきです。

3.どのような検査をするのでしょうか?

血液検査では膵酵素、腫瘍マーカー、血糖値などを調べます。画像検査としてはまず腹部超音波検査やCT、MRI、PET-CTなどで腫瘍の位置や大きさ、周囲の血管や臓器への浸潤の程度、肝臓、肺などの遠隔転移やリンパ節腫大、腹水の有無を診断します。遠隔転移や広範なリンパ節腫大があれば手術適応はなく、化学療法などに移行します。最近では膵臓がんの早期病変におけるEUS(超音波内視鏡)の有用性が重要視されており、当科では地域の患者様の積極的な受け入れと検査を行っています。膵臓がんを強く疑う場合には膵管を観察する内視鏡検査である「内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)」を行い、診断のための組織採取や、黄疸がある場合にはその治療も同時に行います。

4.膵臓がんと診断されたら?

膵臓がんの治療には手術(外科治療)、化学療法、放射線治療があり、前述のような検査によって判明したがんの進み具合(病期)によってこれらの治療を選択します。治療効果が最も高いのは手術(外科治療)であり、手術可能である場合には適切な手術を行うことが重要である一方、切除不能(局所進行、遠隔転移)の場合に手術以外の治療をどのように組み合わせるかが重要となってきます。


手術(外科治療)

切除可能・切除可能境界と判断された場合には、手術(外科治療)が膵臓がん治療の鍵となります。この場合には、がんの遺残がない手術(R0手術)を実現することが重要となり、特に切除可能境界とよばれる周囲の重要血管に近いがんの場合には、下にあるような「集学的治療」を行うことが推奨されています。
手術術式は、膵臓のどの部分にがんがあるかによって決まり、膵頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術(膵臓と膵臓のすぐ横にある十二指腸、胃を切除する術式)、あるいは胃を温存する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術や亜全胃温存膵頭十二指腸切除術などがあります。膵体尾部がんに対しては膵体尾部切除術(膵臓の体尾部を切除する術式)を行い、頭部と体部にまたがった場合は膵全摘術(膵臓すべてを切除する術式)になることもあります。膵臓周囲の血管に浸潤した症例でも個々に検討し、治癒の可能性があれば「集学的治療」の一貫として積極的な手術(血管の合併切除)を施行しています。

膵臓がんに対する集学的治療

膵臓がんは発見時には既に進行していることが多いばかりでなく、膵臓がんそのものの悪性度も高いため、消化器がんの中では最も治療しにくいがんの一つです。切除不能進行状態(局所進行、遠隔転移)の膵臓がんに対しては化学療法を主体とする治療が実施されます。初回に実施される抗がん剤治療の選択肢にはFOLFIRINOX療法、GEM+nab-PTX療法、GEM単独療法、S-1単独療法、GEM+S-1療法などがあります。
また、たとえ膵臓がんを手術により切除できる場合でも、術後早期に再発してくることは珍しくありません。このため特に切除可能境界と判断される膵臓がんに対しては、手術単独治療ではなく術前・術後に抗がん剤治療や放射線治療を併用することが推奨されています。このように、手術単独でなく化学療法や放射線治療を組み合わせて行う治療を「集学的治療」といいます。また最近では、こうした集学的治療の効果は切除可能症例にとどまらず、当初は切除不能(局所進行)と考えられていた膵臓がんが切除可能となることも報告されています。集学的治療は、経験豊富な肝胆膵専門の医師により厳密に実施されます。また、化学放射線治療は提携する施設の臨床研究に則り実施しています。

我々の強み

早期診断から拡大手術まで
膵臓がんの診療は手術治療のみならず、疾患を疑った場合の適切な検査計画、早期診断や加療目的に実施するEUSやERCPなどの内視鏡検査、切除可能境界病変や切除不能病変に対する抗がん剤治療、進行がんに対する集学的治療など、さまざまな角度からの診療が必要となります。我々の施設では、肝胆膵領域を専門とする医師のもと、診断から手術までをすべて一般・消化器外科で実施できる診療実績と環境が整っています。早期診断に必要なEUS(超音波内視鏡)は2017年9月より最新機器を揃えており、地域の患者様を積極的に受け入れています。また大学病院として最先端の治療に取り組んでおり、血管合併切除を伴う拡大手術、集学的治療としての化学療法などを実施しております。血管合併切除を行う場合には慶應義塾大学血管外科のグループとの連携も行っています。さらなる高度医療の提供を要する場合においても、国際医療福祉大学グループそして慶應義塾大学外科とのネットワークを駆使し、化学放射線療法による集学的治療など臨床研究段階の治療を含め、あらゆる手段で最後まで膵臓がんと戦います。

専門外来「膵臓がん専門外来」(土曜日午前)

日本肝胆膵外科学会高度技能指導医の板野医師、および肝胆膵外科専門の今井医師が担当します。

早期診断から拡大手術まで
難治がんである膵がんは、いかに早く見つけるかが大切です。当院は膵胆道酵素異常の患者様の二次検査に、MRI、EUSを用いる膵臓がん早期発見プロジェクトを提案しています。進行がんに対しても、血管合併切除を伴う拡大手術、集学的治療としての化学療法など、あらゆる手段での膵臓がん治療をご提供します。日本肝胆膵外科学会高度技能指導医の板野医師、および肝胆膵外科専門の今井医師が担当します。

主な対象疾患:
肝:膵臓がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵神経内分泌腫瘍(PNET:インスリノーマ、ガストリノーマなど)、膵良性腫瘍、膵炎関連疾患など