糖尿病・代謝・内分泌内科 シリーズQ&A

糖尿病・代謝・内分泌内科

糖尿病・代謝・内分泌内科 シリーズQ&A

高脂血症と脂質異常症は同じですか?
最初に血液の中の「あぶら」の話をします。私たち血液の中の「あぶら」は大きくコレステロールと中性脂肪にわかれます。油が水に溶けないように、血液の中の「あぶら」もそのままでは血液になじみません。そのため体の中の「あぶら」は、「リポタンパク」という血液になじみやすいものに入れられます。理解を助けるため、「リポタンパク」は血液の中の「あぶらを入れるカプセル」と考えてください。 このカプセルには、カイロミクロン、VLDL、LDL、HDLという種類があります。
カイロミクロンは食事に含まれ、吸収された「あぶら」を肝臓に届けるカプセルです。
VLDLは肝臓で作られたあぶら(コレステロール、中性脂肪)を届けるカプセルです。VLDLというカプセルは血液を流れてゆく途中でカプセルの中の中性脂肪が溶け出して中性脂肪が少なくなり、VLDLより小さなLDLというカプセルになります。このLDLが体のすみずみにコレステロールを運びます。LDLが増えると体のすみずみでコレステロールが過剰供給となり、動脈硬化を引き起こします(つまりLDL=悪だま)。そのため、血液の「あぶら」が多いことを表す「高脂血症」という言葉が用いられ、この中には高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症が含まれます。

一方、私たちの体の中には過剰になった「あぶら」を肝臓に戻して代謝するシステムが備わっており、それがHDLというカプセルです。HDLは体のすみずみからコレステロールを引き抜いて肝臓に戻してくれます(つまりHDL=善だま)。 これまでは、LDLコレステロールの増加で動脈硬化が引きこされると考えられてきましたが、糖尿病や肥満に伴い善だまのHDLコレステロールが少なくなっても起こることがわかってきました。 さらに糖尿病や肥満では、VLDLから中性脂肪が溶け出しにくくなり、さまざまなサイズのVLDLがでてきたり(VLDLレムナント)、LDLというカプセルがさらに小型 (sdLDL)になったりします。これらVLDLレムナントやsdLDLが血液の中にでてくることにより、動脈硬化をさらに進めることもわかってきました (sdLDL=超悪玉)。
つまり血液の中の「あぶら」の量が多い、少ないという状態に加えて、「あぶら」を運ぶカプセルの量や質(大きさ)も考える必要がでてきたのです。
このようなことをふまえて、「脂質異常症」という言葉が生まれました。
つまり、脂質異常症には高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、高中性脂肪血症に加えて低HDLコレステロール血症、高レムナント血症、高sdLDL血症などを含むより広い概念となり、最近では高脂血症よりも使用されています。
糖尿病は治りますか?
ひとくちに糖尿病といっても、その種類はさまざま。治療法もそれぞれによって変わりますので、最初に糖尿病の分類から説明します。
糖尿病は「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、「妊娠糖尿病」というように、その成因 (糖尿病になる原因)によって大きくわけられます。この中で、日本人の糖尿病の95%が2型糖尿病です。

糖尿病の分類

【1型糖尿病】
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊される病気です。若い方に発症することが多く、最終的にインスリン分泌が極端に少なくなる、もしくはなくなってしまいますので、膵臓・膵島移植以外には治すことはできません。

【2型糖尿病】
2型糖尿病は、遺伝(親から受け継いだ体質)に過食、運動不足、肥満などの環境的な要因が加わって発症します。ですので、環境的な要因を改善することにより「血糖値が良くなれば」、糖尿病の薬を減らしたり、中止したりすることができる可能性があります。ここで重要なことがあります。それは、2型糖尿病の方は、糖尿病の薬が必要なくなったからといって、糖尿病が治ったわけではないことです。 血糖値が良くなっても、過食や運動不足になると、再び血糖値は悪化します。ですから糖尿病は「治す病気」ではなく、「上手に付き合ってゆく病気」と考えてください。

【その他の特定の機序、疾患によるもの】
その他の特定の機序、疾患によるものの中には、膵臓の病気、ホルモンの病気など、さまざまな疾患が含まれています。中には他の病気のために使用されているお薬によって糖尿病になってしまうこともあります。

【妊娠糖尿病】
妊娠中に初めて指摘され、糖尿病までには至っていないものの正常より高い血糖を示した女性は、妊娠糖尿病と診断されます。妊婦健診によって診断され治療を受けます。出産後には血糖値が下がることが多いのですが、中には出産後も血糖値が下がらない場合や、出産後しばらくしてから血糖値が上昇することがありますので、妊娠糖尿病と診断された方は産後も定期的な検査が大切です。

このように糖尿病の原因は様々です。医学も日進・月歩で、糖尿病のお薬もどんどんと良くなってきていますが、多くの糖尿病専門医は近い将来 糖尿病が完全に治せる病気になることを夢見て、日々仕事をしています。
高血圧は治りますか?
根治可能な場合と、そうでない場合があります。

【解説】
高血圧を持つ患者さんは、心臓病、脳卒中、腎障害などの、時に生命を脅かすこともある合併症発症の危険があり、適切な血圧管理は健康維持のために重要です。特に最近の研究では、厳格な血圧管理により心不全や脳卒中の危険性が有意に低下したことから、130/80 mmHg未満という従来よりもさらに厳格な値を目指すことが推奨されています。
高血圧は肥満、塩分の過剰摂取、アルコールの多飲、運動不足、喫煙などと関連する一方で、年齢や遺伝的な体質、人種(有色人種で高血圧が多い)など避けられない要素も関連すると言われています。また、高血圧を持つ患者さんの中には血圧を高めるホルモンが過剰に分泌される病気を持つ方がおられます。特に頻度の高いものとして原発性アルドステロン症という副腎という組織に関連する病気があります。「そんな病気初めて聞いた」とおっしゃる方も多いと思いますが、近年この病気をもつ患者さんが、高血圧を有する患者さんの10人に1人程度存在することが分かってきました。副腎は左右の腎臓の上にそれぞれ一つずつ存在する空豆大の臓器で、コルチゾール・アルドステロン・カテコールアミンなど生命維持に重要なホルモンを分泌します。そのうちアルドステロンという血圧を高めるホルモンが副腎から過剰に分泌される病気が原発性アルドステロン症です。原発性アルドステロン症の患者さんでは通常の高血圧症(本態性高血圧症)の患者さんに比べて、脳卒中や心臓の病気(虚血性心疾患や心房細動などの不整脈)、腎不全を合併する頻度が高いことが知られています。一方で、アルドステロンが過剰に分泌される腫瘍が見られる場合には、手術でその腫瘍を切除することにより高血圧が治ることがあります。そのため、高血圧を持つ患者さんでは原発性アルドステロン症の有無を調べることが重要になります。特に三十歳未満で高血圧が見られる、三種類以上の降圧薬(高血圧治療薬)を使っても血圧が適正にならない、血圧が高く血中カリウム値が低い、などの症状がある方は原発性アルドステロン症が疑われるため内分泌内科での精密検査をお勧めします。

関連ページ