糖尿病・内分泌代謝センター

糖尿病について

糖尿病とは

皆さん、こんにちは。国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・内分泌代謝センター長の野見山です。当センターのホームページは、私たちが診療している病気をわかりやすく解説し、患者さんの理解を高めるとともに、受診しやすい心理的・社会的環境づくりに貢献できることをめざして作成しています。ご自身やご家族の体調の変化で、気になることや当センターで診療している病気に当てはまることがありましたら、遠慮なく受診してください。

糖尿病は、まさに国民病となりました。国民健康・栄養調査では、現在、全国で約1千万人の糖尿病患者がいることが示され、成人の6人に1人が糖尿病かその予備軍と言われています。つまり、誰でも糖尿病になる可能性があると言えます。糖尿病は、あなたやあなたの大切な人に起こりうる、放っておけない病気です。

糖尿病と一言で言っても、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病、妊娠糖尿病という4種類に分類されます。1型糖尿病は、ウイルス感染などをきっかけに、主に免疫学的な異常でインスリンを分泌するすい臓のβ細胞が破壊される病気です。その他の糖尿病とは、遺伝的な病気に伴うものや、ステロイドなど薬剤に伴うものを指し、妊娠糖尿病は、妊娠中に認められた高血糖を指します。そして、糖尿病の95%以上を占めるのが2型糖尿病です。

動画で見る(オンラインけんこう講座第1回エピソード1 糖尿病とは)

糖尿病の種類

1型糖尿病 すい臓の細胞が破壊されて、インスリンを分泌することができなくなり発症します。(抗GAD抗体、抗IA2抗体)
幼少期~10代で発症することが多く、病態が進行すると、インスリンを毎日注射しなければなりません。
2型糖尿病 すい臓から十分な量のインスリンを分泌することができなくなったり、体内でのインスリンの働きがわるくなって発症します。
成人してから発症することが多く、わが国の糖尿病患者の95%以上は2型糖尿病です。
その他の特定の機序、疾患によるもの 遺伝子異常や、すい臓・肝臓などの病気、感染症などが原因で発症します。
妊娠糖尿病 妊娠中にはじめて見つかる、または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常を妊娠糖尿病といいます。

日本糖尿病学会 編「糖尿病治療の手引きー患者さんとその家族のための(改訂第55版)」P.16(南江堂.2011)

インスリン分泌細胞の機能不全が原因

皆さんは糖尿病(2型糖尿病)と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。過食、肥満、運動不足といった、あまりよろしくないイメージが先行するのではないでしょうか。しかし、それらは糖尿病の一部でしかありません。糖尿病の中心病態は、インスリンの相対的もしくは絶対的作用不足、つまりすい臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)が十分にインスリンを分泌できない状態です。そして、β細胞がインスリンを分泌するパワーは、遺伝的なものに大きく左右されます。すなわち、糖尿病になるということは、糖尿病になりやすい体質を持って生まれたということであり、背の高さ、肌の色、目の色がちがうのと同じキャラクターのちがいです。ですから、糖尿病と戦うのではなく、上手にお付き合いすることが大切です。

糖尿病の症状と診断

糖尿病は、ほとんど症状がないのが恐ろしいところです。静かに忍び寄り、気づかぬうちに合併症を発症し進展させる、サイレントキラーとも言えます。著明な高血糖になると、口渇(のどの渇き)、多飲(水分を多く摂取する)、多尿(尿がたくさん出る)、体重減少(痩せる)といった典型的な症状を認めますが、そうなる前に健診等で血糖値をチェックし、高ければ受診してください。
糖尿病は、主に空腹時血糖値が126 mg/dL以上かつヘモグロビンA1c(HbA1c)6.5%以上で診断されます。これらの値を両方とも超えている人は、すぐに受診してください。片方だけ超えている人も、さらなる精査が必要です。また、空腹時血糖値の正常は110 mg/dL未満です。糖尿病の診断に至るまで血糖値が高くない人でも、正常値を超えている人は、ブドウ糖負荷試験を行うと2時間後の血糖値が200mg/dL以上で診断される人もいますので、受診して検査を受けてください。特に、ご家族に糖尿病患者さんがいらっしゃる方はリスクが高いので、定期的な検査をお勧めします。

治療方法

食事療法

食事療法は糖尿病治療の基本中の基本です。どんなに素晴らしいお薬を服薬もしくは注射していても、食事療法が守れていなければ、血糖は良くなりません。しかし、間違った食事摂取法はかえって健康を害することにつながります。食事制限ではなくて食事療法であり、正しく食べる”ことが大切です。
まず、食事療法には鉄則があります。三食きちんと食べることと、間食はしないということです。同じ食事量でも三回に分けて“空腹”の時間を作る食べ方のほうが、太りにくく血糖値も上がりにくいです。朝食抜きや夕食のドカ食いは禁物です。朝食によるインスリン分泌は1日の血糖をコントロールするのに重要な役割を担っています。また、夕食や夜食の食べ過ぎは、食後に動く時間がなくそのまま寝てしまうので、脂肪になりやすく太りやすいので避けましょう。お相撲さんの生活を思い出してください。“稽古―食事―睡眠”ですよね。理想的な肥れる生活です。


エネルギー摂取量

エネルギー摂取量は、目標体重と日常生活の労作に従って設定します。目標体重はBMI(Body Mass Index)=22 kg/m2となるよう下記の通り身長から設定されます。

目標体重の算出方法
目標体重(kg) = 22 × (身長 m)2
※身長170 cmの人は、22 ×(1.7)2 で、63.58 kgとなります。

エネルギー係数は日常労作によって下記の通り計算されます。

軽い労作(大部分が座位の静的活動)
25~30kcal/kg
普通の労作(座位が中心だが通勤・家事、軽い運動を含む)
30~35kcal/kg
重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある)
35~ kcal/kg

以上をまとめて身長170 cmの軽い労作の人の1日エネルギー摂取量を計算すると下記のようになります。

1日のエネルギー摂取量
(身長170cm・軽い労作の場合)
目標体重 × エネルギー係数 = 1日のエネルギー摂取量
63.58 kg × 25kcal/kg    = 1589.5kcal

一般的には上記の方法でエネルギー摂取量を計算しますが、最近では高齢者のサルコペニア・フレイルを予防する観点から、特に後期高齢者はBMI 25で目標体重を設定することも推奨されています。


栄養素の構成

日本糖尿病学会編「糖尿病治療の手引きー
患者さんとその家族のための(改訂第55版)」
P.69(南江堂.2011)より改変

エネルギー摂取量の次は栄養素の構成が重要です。総エネルギーの50~60%を炭水化物から摂取し、タンパク質を20%までとして、残りを脂質とします。極端な低炭水化物食はケトンという毒を産生することにつながりますので、糖尿病患者さんは絶対にしないでください。
※ただし、合併症がある場合、例えば腎症や高脂血症、循環器疾患、高齢者では異なります。

食品の栄養素を正しく理解し、正しく食べるためには「糖尿病食事療法のための食品交換表(第7版)」(日本糖尿病学会 編、文光堂.2013)を有効活用することをお勧めします

Q.次のうち“野菜”はどれでしょう?

1.ジャガイモ
2.レンコン
3.カボチャ
4.トウモロコシ
5.アボカド

正解は、全て野菜ではありません。1~4のジャガイモ、レンコン、カボチャ、トウモロコシは食品交換表で言うところの表1炭水化物、5のアボカドは表5脂に分類されます。一般的に言われる野菜と、糖尿病食事療法の野菜には違いがあることを理解しましょう。


よくある質問

Q. お菓子を食べてはいけませんか?

食べても結構です。しかし、間食にはしないで、食事の時に一緒に食べていただき、その分他の食事の摂取量を減らしてください。3時のおやつや夜食にするのではなく、食直後のデザートにしてください。食べることは人生の楽しみです。大好きなお菓子を我慢するのではなく、賢く召し上がってください。

Q. 果物は体にいいからたくさん食べていいですよね。

これは間違いです。ビタミンの摂取という意味では良い食材ですが、果糖を中心とした多くのエネルギーを含んでいます。果糖の過剰な摂取は、インスリン抵抗性が増したり、脂肪肝を促進します。果物は1日1単位(80kcal)までに抑えてください。その他に患者さんが陥りやすい間違いとして、スポーツ飲料やエネルギードリンクがあります。これらもたくさんの糖質が含まれていますので、摂取を控えてください。

Q. アルコールはダメですか?

ダメではありません。1日1単位のアルコール飲料は適量と言われ、リラクゼーション効果をもたらします。アルコール量にして1日25グラム程度までを目安にしてください。血糖上昇という観点からは、同じアルコール量であっても醸造酒よりも蒸留酒の方が、血糖が上がりにくいです。しかし、過度のアルコールは間違いなく有害ですし、低血糖の原因にもなりますので注意しましょう。


初診時の食事療法のポイント

初診時にこれまでの食習慣を聞き出し、明らかな問題点がある場合まずその是正から進めます。
食事療法のポイントを7つ挙げましたので、参考にしてください。

1.腹八分目とする。
2.食品の種類はできるだけ多くする。
3.動物性脂質(飽和脂肪酸)は控えめに
4.食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)を摂る。
5.朝食、昼食、夕食を規則正しく。
6.ゆっくりよくかんで食べる。
7.単純糖質を多く含む食品の感触を避ける。

日本糖尿病学会 編「糖尿病治療ガイド2020-2021(第1版)」P.48(文光堂.2011)

運動療法

食事療法と運動療法は糖尿病治療の2本柱と言われていますが、食事療法に比べて運動療法は十分な指導が行き届いていません。日本糖尿病学会が行ったアンケート調査によると、運動療法は3割の患者さんが「指導されていない」と回答しています。また、どのような職種が指導しているのかを聞いてみると、栄養指導は明らかにエキスパートである栄養士に指導されているにも関わらず、運動療法は明確な責任分担がなされておらず、「医師に指導されている」が一番多い回答結果となっています。今後、誰が運動療法指導のエキスパートであるのかを明確にする必要があると考えています。

当院では、こういった状況を打破しようと、運動・身体活動指導のエキスパートである理学療法士によるオーダーメイドの運動指導を行っています。老若男女、個々の体力に合った運動療法を体験してみてください。

「糖尿病」専門運動指導についてのお問い合わせ

一般リハビリテーション室 047-375-1111(代表)

運動の効果

糖尿病に対する運動の効果には、間接作用と直接作用という二つの作用機序があります。 間接作用とは、運動によって内臓脂肪が燃やされてインスリン感受性が良くなる作用で、同じ量のインスリンで(注射したものも、自分から出されたものに関わらず)効率よく糖を取り込めるようになります。
一方、直接作用とはインスリンに関係なく、糖が直接的に筋肉内に取り込まれるという運動特有の作用で、この作用を世界で初めて発見したのは野見山センター長も師事した順天堂大学医学部名誉教授の河盛隆造先生です。河盛先生はすい臓を摘出した犬でも運動によって血糖が下がることから、直接作用を1970年代に発見されました(J Clin Invest 1977 Feb;59(2):331-7)。
これら二つのメカニズムが作用して、運動は血糖コントロールを改善してくれます。さらに最近、運動には興味深い作用があることが分かりました。運動によって産生されたIL-6(intereulin-6)という物質が、小腸やすい臓からのGLP-1 (glucagon-like peptide-1) の分泌を促進しているという報告があります。GLP-1はそれ自体、糖尿病治療薬として臨床応用されていますし、DPP-4(Dipeptidyl peptidase-4)阻害薬の標的物質になっています。運動がDPP-4阻害薬の血糖降下作用を増強しているかもしれません。また、運動には気分を爽快にしてくれたり、認知症やがんを抑制する作用がある可能性も報告されています。医聖ヒポクラテスは“歩くことは人間にとって最良の薬である”という格言を残しています。ギリシャ時代から運動療法の重要性に気づいていたのでしょう。運動療法の多面的作用を図にまとめました。

じっとしていないで動くことが良い

運動療法の実際は、最大酸素摂取量の約50~60%の運動を30分以上続けるとされてきました。最大酸素摂取量を測定した経験のある患者さんはあまりいらっしゃらないと思います。最大酸素摂取量は下記のようにmax心拍数で置き換えられます。

最大酸素摂取量
最大酸素摂取量=max心拍数=220ー年齢

ですから、50歳の人であればmax心拍数は170/分となり、その50~60%である心拍数が85~102/分くらいになる運動をゆっくり長時間行うことが推奨されていました。
しかし現在では、どんな運動でもとにかくじっとしていないで動くことが良いとされています。例えば、貧乏ゆすり(ジグリング)も運動になっています。また、30分以上座位でじっとしないことと米国糖尿病学会は指示しています。30分に1回は椅子から立ち上がり、歩き回ったり、体操をしてはいかがでしょうか。


よくある質問

Q. 運動はいつしたらいいですか?

基本的に食後にしてください。食前の運動は低血糖を引き起こしたり、その後の食事の吸収を上げて肥ってしまう可能性があります。特に早朝空腹時朝食前の運動は、交感神経の活性が高く心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がり危険ですから避けてください。食後の暖かい時間に運動することをお勧めします。“忙しい”という言い訳をする方には、食後の10分間足踏みをお勧めします。食後の運動が食後高血糖を抑制して、糖を脂肪ではなく筋肉に取り込んでくれます。短い昼休みでも10分の時間は取れるでしょうし、足踏みなら場所を選ばずに行えます。

Q. 運動したらその分食べてもいいですか?

言語道断いけません。食事療法あっての運動療法であることを忘れないでください。
分かりやすくスポーツで例えましょう。食事を制限して運動をするということは、極端な話、ボクサーのような生活です。しかし一方、食べ放題で運動をするのは力士のような生活です。体型の違いは一目瞭然です。ボクサーのような筋肉質でインスリン感受性が高い体型作りをめざしてください。力士の皆さんは職業柄、たくさん稽古をして、たくさん食べてすぐ寝るという理想的な肥る生活をされています。糖尿病患者さんは真似しないようにお願いします。

Q. 運動後血糖が上がっていますが何故ですか?

運動後血糖が上がっている理由はいくつかあります。まずは脱水です。運動によって水分が失われ、血が濃くなって血糖値が上がっている可能性があります。運動の前後で水分補給を忘れずに行いましょう。また、アドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールのようなストレスホルモンが出るほどの精神的・肉体的にきつい運動をしている可能性もあります。競技性のある運動や“きつい”運動は避けてください。水分摂取をする際に、通常のスポーツ飲料は糖がたくさん入っていますので、折角運動して下がった血糖がまた上がるかもしれません。糖尿病患者さんの運動時の水分補給には、ミネラル量が含まれ、カロリーゼロと表示されたスポーツ飲料※がお勧めです。

※公益財団法人日本スポーツ協会では、運動時の水分補給には、塩分(食塩相当量)0.1~0.2%を含むスポーツ飲料を推奨しています。コカ・コーラ社のアクエリアス ゼロ🄬は、日本スポーツ協会が認める、ミネラル量を含有したゼロカロリーと表示できる唯一のスポーツ飲料です。

運動は万能薬でもありますが、諸刃の剣でもあります。合併症の進行度合いや血糖コントロールの状況によっては危険なこともあります。主治医の先生とよくご相談の上、有効かつ安全に楽しく行ってください。


運動療法のご紹介

過去に当院で開催した糖尿病教室でご紹介した、当院の医師、理学療法士監修の簡単にできる運動をご覧いただけます。

運動療法のご紹介

薬物療法

「準備中(近日公開予定)」

スティグマとアドボカシー活動

聞きなれない言葉だと思います。スティグマとは、烙印と日本語訳されます。糖尿病患者であるというだけで、食べ過ぎで運動不足でだらしない人だという、負の烙印を押されてしまうケースがあります。最近では、糖尿病患者は全員が新型コロナウイルスにかかり、重症化するかのようにマスメディアがスティグマを押しています。しかし、正確には糖尿病患者さんも、新型コロナウイルス感染症の発症率は一般の方と変わらず、血糖コントロールが不良の人が重症化しやすいというデータが報告されています。このように、根拠なく糖尿病患者に押されたスティグマを払拭し、糖尿病患者が胸を張って堂々と糖尿病の治療と向き合えるよう、日本糖尿病協会・日本糖尿病学会は、「糖尿病の正しい理解を促進する活動を通じて、糖尿病をもつ人が安心して社会生活を送り、人生100年時代の日本でいきいきと過ごすことができる社会形成を目指す」アドボカシー活動を行っています。そして、当院では、スタッフ全員が、糖尿病アドボカシーの理念を理解し、患者さんがウィズ・糖尿病で幸せな人生を送るためのパートナーとしてお手伝いさせていただく心構えができてますので、安心して受診してください。血糖コントロールはつらく険しい道ではなく、未来に向けた人生設計なのです。