糖尿病・内分泌代謝センター

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第9回は当院の病院教授であります野田光彦先生に執筆いただきました。
貴重なコラムに目をお通しください!

第9回 コーヒーと糖尿病

今世紀に入って、コーヒーが2型糖尿病(生活習慣が発症に関与する、いわゆる一般の糖尿病)の発症を抑制する可能性が報告されています。最初の報告は2002年のオランダからのものです。私も、日本の共同研究によって、コーヒーを多く飲む人では2型糖尿病の発症が少なかったことを公表しており、また、それ以前に、上記のオランダからの論文に関連して、わが国でもコーヒー摂取者に空腹時血糖値の高い人がより少ないことを報告しています。これらを含め、現在までに多くの論文が最初の研究の結果を支持しています。一方で、私が共同研究として行った、これまでの研究の結果をまとめた別の解析では、コーヒー摂取が空腹時血糖値を確実に低下させるという結論は得られておらず、かりにコーヒーに血糖降下作用があったとしても、それは大きなものではないことが推測されます。

コーヒーが2型糖尿病を予防するかもしれないとする研究は、いずれもコホート研究という、数万人規模までの地域住民などの集団を追跡調査する研究ですが、それらによって得られた結果からは、すなわち、具体的にいえばコホート研究では、因果関係を示すことはできません。つまり、コーヒーを多く飲む人から糖尿病の発症が少ないことはいえても、では、コーヒーをあまり飲まない人がたくさん飲んだら糖尿病になりにくいかというと、それはコホート研究からはわかりません。コーヒーが抗炎症作用を有することを示唆する報告などもありますが、確実なエビデンスが明らかになるまでは、結局は、コーヒーも嗜好品の一つとして、ご自身の好みに合わせて楽しむのがよいでしょう。

ただし、心疾患がある場合にコーヒーが心筋梗塞の発症を増加させたり、妊婦のカフェイン摂取によって流産や胎児の発育不良が増えたりするという調査結果があり、また、コーヒーに含まれるカリウムは高カリウム血症を来しやすいですので、腎臓の機能が低下している人ではとくに注意が必要で、多量の摂取は避けるべきだと考えています。