診療科のご案内

腎泌尿器外科

特徴ある医療

2017年4月、国際医療福祉大学医学部開学とともに、泌尿器科の診療体制が変わりました。医学部腎泌尿器外科学教授(代表)である宮﨑淳教授の着任とともに、関連施設である国際医療福祉大学病院、国際医療福祉大学三田病院および宮﨑教授の前任地である筑波大学などとともに連携しながら、それぞれの医師が培ってきた泌尿器外科学を融合させることにより、これからの泌尿器科の新時代を切り拓いていきたいと考えております。特に国際医療福祉大学の関連施設としては、腎泌尿器科の診療面において、QOLを重視した高度な先端的医療を安全に提供することを心掛けております。

概要

グループ関連施設や筑波大学などと連携しながら、QOL(生活の質)を重視した高度な先端的医療を安全にご提供することを心がけています。

特に、尿路上皮がん、精巣腫瘍、男性不妊症および尿路感染症に力を入れています。 これまで、およそ100例の膀胱温存療法を行い、約8割の患者様で実際に膀胱を温存することができ、温存できた方のうち、約8割の方は5年生存を得られています。また、精巣腫瘍に対しては、リンパ節や肺、その他の臓器に転移していても、抗がん剤を使った化学療法と手術を適切に組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。

対象疾患

泌尿器科全般、尿路・男性生殖器腫瘍性疾患(腎がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、前立腺がんなど)、尿路結石症、尿路感染症、排尿困難・頻尿・尿失禁等の排尿障害(前立腺肥大症、過活動性膀胱など)、性機能障害など

症状

泌尿器科を受診する患者さんの代表的な症状やきっかけには次のようなものがあります。

  • 赤い尿が出た(血尿)
  • 排尿のときに痛む
  • 尿が出にくい・回数が多い
  • 尿が漏れる
  • PSAが高い
  • 陰嚢・睾丸の腫れ(はれ)

専門外来

前立腺がん

前立腺とは、膀胱の出口で尿道を取り囲んでいる男性のみにある臓器です。前立腺がんとは前立腺から発生するがんであり、他のがんと同様に放置すると徐々に病気が広がり、最終的には生命にかかわる可能性のある病気です。欧米では極めて多いがんで、男性では最も多くみられるがんです。日本では前立腺がんの患者数が急増しており、男性のがんのうち4番目に多くなっています。腫瘍マーカーであるPSAは前立腺がんの発見や治療中の病状把握などに用いられます。前立腺がん細胞は男性ホルモンがあると増殖しやすい性質をもっています。

前立腺がんの治療法

主な治療としては大きく分けると手術、放射線治療、ホルモン療法があります。これらの治療法を組み合わせることもあります。
ホルモン療法だけでは前立腺がんは根治できません。転移してからがんが見つかった場合にはホルモン療法が第一選択となりますが、転移のない状態で見つかった場合には原則として根治が望める手術や放射線療法が第一選択です。
すべての患者さんに上記の治療法が等しく適しているわけではありません。腫瘍のタイプ、年齢・全身状態、患者さんご自身の生活環境や考え方などから適切な治療法をしぼっていく必要があります。

精巣腫瘍

多くは精巣(睾丸)局所の腫れで気付かれます(「タマ」が腫れた状態)。あまり痛くないのが特徴ですが、ある程度の痛みや違和感もあります。「タマ」が腫れる疾患としては痛みのない「陰嚢水腫」や痛みや熱を伴う「精巣上体炎」などの良性疾患の方がより一般的です。ただ、自覚症状だけでは区別が難しく「タマ」に上記の異常を感じた場合は泌尿器科専門医を受診することをお勧めします。通常は、その日のうちに診断可能です。精巣腫瘍は転移していても治癒可能ですが、転移しない状態(病期1)で治療を開始すればより負担が少なく、より高率に治癒が可能ですので早期受診が重要です。

膀胱がん

膀胱がんの診断には、まず【1. 尿検査】【2. レントゲン】【3. 膀胱鏡】を行います。

尿検査

尿中にどのような細胞が出ているか、悪性(がん)細胞が出ていないかを調べます。患者さんには痛みを伴わない、基本的ですが大切な検査です。

膀胱鏡

膀胱の中を内視鏡で観察します。膀胱がんの診断には最も大切な検査です。尿の出口(尿道口)から内視鏡を挿入するため多少の痛みを伴いますが、当科では柔らかく細い内視鏡(軟性膀胱鏡)を使用しており、痛みはほとんど無いようです。
これらの検査で膀胱がんが発見された場合、さらにCTスキャン、MRI、胸部レントゲン、シンチグラフィー、などの検査を行う場合があります。これらは、膀胱がんがどの程度進行しているか等、治療方針の決定のために行います。

膀胱がんのタイプ

膀胱がんには大きく分けて2つのタイプがあります。
筋層に達していない【筋層非浸潤性(表在性)】と【筋層浸潤性】に大別され、両者の鑑別が治療において決定的に重要です。

1. 筋層非浸潤性(表在性)膀胱がん
筋層非浸潤性膀胱がんにおいては内視鏡を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)で治療することができます。しかし、治った後に半数以上の患者さんで膀胱内に新たな腫瘍が発生し、その一部は筋層浸潤性に進展するという問題があります。このため手術後に再発予防を目的とした膀胱内注入療法を行います。注入には抗がん剤やBCG製剤を用いますが、どの薬剤を選ぶかは、個々の患者さんの病気の状態に応じて決定されます。
膀胱内注入療法を行っても再発が完全になくなるわけではありません。再発腫瘍を早く発見するために、外来で定期的な膀胱鏡を行う必要があります。
2. 筋層浸潤性膀胱がん
筋層浸潤性膀胱がんに対する標準的治療は膀胱全摘術です。同時に、腎臓で作られた尿の出口を変える尿路変向術を行います。尿路変向術には尿をためる袋をお腹に張るタイプから袋を必要とせず自排尿が可能なタイプまでがあります。しかし、全摘術以外の方法で膀胱を残したいという希望を持つ患者さんも少なくありません。
我々の施設では、浸潤性膀胱がんであっても、後述のような条件をもとに治療に適応があると判断された場合には抗がん剤と放射線を併用することによって膀胱をとらずに治療することがあり、膀胱温存療法と呼んでいます。膀胱温存療法に適した腫瘍は、腫瘍数が1つで大きさが3cm以下のものです。腫瘍の数が多い、あるいは大きい場合、膀胱を残せる可能性は低くなります。

膀胱が温存できるとされている基準は以下の通りです。

1)経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT)で腫瘍を可能な限り切除します。
2)動注化学療法を3週間毎に3回行い、同時期に膀胱を含めた小骨盤部へX線を照射します。
3)腫瘍部位のTURBTを再度行い、顕微鏡検査で腫瘍の残存を認めなければ、腫瘍部位にX線または陽子線を追加照射して膀胱を温存します。もし腫瘍の残存があれば膀胱全摘術を行う必要があります。

以上の治療により膀胱が残せると判断した場合は、筑波大学をご紹介します。

尿路結核

肺結核の減少と伴い、現在では年間約100例程度の発症数と考えられます。的確な診断をすることが難しい疾患ですので、診断が確定しない方も多いと考えられます。当院は結核病床を有しており、また泌尿器科専門医と結核病認定医を兼ねた医師もおりますので、お気軽にご相談ください。